本研究では、最新のデータと新たな計算方法を用いて縄文時代の人口推計を行い、人口現象と祭祀や墓制の変化との関連性を明らかにする。約40年ぶりとなる人口推計は大きな学術的意義を有し、人口と祭祀や墓制との関係という視点も従来の研究にない新たな問いである。研究代表者が「乗算法」と名付けた推定方法は、歴史人口学の間接的人口データによる人口推計の手法分析をもとに導き出した。基本式は下記のとおりである。
P(人口静態)=D(総量・総数データ)×R(Dの1単位に対応する人数)+C(補正項)
例えば、10世紀前半の人口(P)は、総田地面積(D)×1反あたりの扶養人数(R)+非農業人口で求めている。建物数を用いる本研究では、基本式を下記のとおりとする。
P(人口静態)=D(総建物数)×R(1軒の平均居住人数)+C(遺跡数による補正)
小山はD値に遺跡数を用いたが、本研究では建物数を採用する。建物は出土土器型式からより短い時間幅で時期決定が可能であり、1軒の居住人数のほうが1遺跡の人数よりも少ないばらつきで設定できる。したがって、より良い推計結果が期待できる。